ないのです、下着まで、これと同じことに切れ目が入っているんです。いいえ、下着ばかりじゃありません、たしかにこの私の身体の中にも、これと同じ筋がついていると思いますが、よく見て下さい」
と言って弁信法師は、肌を押しぬいで見ますと、赤い筋が一線、左の肩から、胸から、下腹までかけて、絹糸ほどの筋を引いているのですから、そこでお雪が驚いて、
「弁信さん、お前、誰かに斬られたんですか」
「いいえ、斬られたんなら生きちゃいませんが、わたしは斬られなかったのです。その代り、つまり、私の身代りにその卒都婆が斬られたんでしょう」
「誰が斬ったのでしょう」
「誰か知りません」
「怖いことね」
 お雪は慄《ふる》え上って思わず小庭の方を見廻しましたが、小春日和《こはるびより》うららかで、子をひきつれた鶏が、そこでもククと餌を拾っているばかり。
「ちゅう、ちゅう、たこかいな……、弁信さん、お前にこれだけ上げよう」
 茂太郎は頓着なしに、山から拾って来た栗の粒を数えて、一山だけを弁信の前に置き、改めてお雪に向い、
「雪ちゃん、お前にも少しわけて上げようか」
 庭の鶏も、縁の上の人も、いずれも平和の気分ではあるが
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