一方では水を切って落ちて来た一刀。丈余の卒都婆《そとば》をストリと二つに切って、南無阿弥陀仏の梵字《ぼんじ》を頂いた「我不愛身命」の残骸が下に、残る所の一面には、「但惜無上道」が冷々たる寂光を浴びて、空を制してそそり立っているばかりです。
「あ!」
と言ったのは清澄の茂太郎で、弁信法師は天に上ったか、地に伏したか、その影をさえ見ることができません。
 暫くあって弁信法師が、
「茂ちゃん、危ないよ」
「弁信さん、どうしたの」
 二人は抱き合って、卵塔場の中へ紛《まぎ》れ込んで姿を消してしまいました。
 同時に、竜之助の姿もそこには見えません。ただ氷片のような卒都婆の残骸が、いよいよ白く月光を浴びて、夜の更くるに任《まか》するのみです。

 その翌朝、二つに切られた卒都婆を見て、まず驚きに打たれたのは、寺の娘のお雪ちゃんであります。
「まあ、卒都婆が二つに切れていますこと、勿体《もったい》ない」
 それを拾い上げているところへ、子をつれた鶏が餌をあさりに来て、ククと鳴く。
「綺麗《きれい》に切れている、茂ちゃんでも悪戯《いたずら》をしたのか知ら」
 長さ一間に及ぶ、梵字と経文の卒都婆の半分
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