い」――庭へ走り出して、見えない眼をこちらへ振向けて返事をするはず。そうすると茂太郎は、「ああ、わたしだよ、弁信さん、琵琶を持ってこっちへおいでよ」「茂ちゃん、お前どこにいるの」「三重の塔の天辺《てっぺん》にいるんだよ、月がいいからおいでよ」「待っておいで」――そこで弁信が、いったん寺の中へ取って返して琵琶を持ち出して来るのだが、今宵はさっぱり[#「さっぱり」に傍点]返事がありませんから、
「どうしたんだろう」
九輪の上で茂太郎は、しきりに小首を傾けております。
どこへも出かけたはずはない、まだ眠ったとも思われない。打てば響くほどの返事がないのが、なんとなく気がかりで、茂太郎はまもなく、三重の塔を下へ降りて来ました。
下りて来たところも満地の月。月光、水の如くひたひたと流れているものですから、茂太郎の心が浮立って歩む足どりも躍るように、精いっぱいの声を張り上げて、宮原節を歌い出しました。
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向うを見ろよ月が出る
おいらは森にいつ行くか
しゃるろっとにしゃるろは
こう訊《き》いた
しゃとうには
とう、とう、とう
おいらが持つのは一人の神様
一人の王様
たった一
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