腕の逞《たくま》しいところを見て、
「按摩さん、お前は幾つだえ」
「え、私の年でございますか、まだ若うございますよ」
「若いのは知れているが、幾つにおなりだえ」
「エエ、十三七ツでございます」
「ちょうど?」
「左様でございます」
「おかみさんはありますか、それともまだ一人ですか」
「へへえ……」
「なんだね、その返事は。あるのですか、ないのですか」
「あるのですよ、一人ありますのですよ」
「一人ありゃたくさんじゃないか」
「おかげさまでどうも……相済みません」
「おかみさんがあったって、済まないことはないじゃないか」
「なかなか親切にしてくれますから、それで私も助かります」
「おやおや。そうして何かえ、そのおかみさんは容貌《きりょう》よしかね」
「へえ、容貌《きりょう》のところは私にはわかりませんが、皆さんが、私には過ぎ者だとおっしゃって下さいます」
「やりきれないね」
「ところが、ごしんさま、容貌がよくて、気立ての親切な申し分のない女が、私共みたような不具者《かたわもの》のところへ来てくれるからには、どのみち、ただ者じゃありますまい」
「前はどうだっていいじゃないか、今さえよければ
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