こしらえると、本所に住んでいたのらくら[#「のらくら」に傍点]者の御家人が負けない気になって、本所囃子というのをこしらえやがったが、やっぱり馬鹿囃子の本音は、生白《なまじろ》い旗本や御家人の腕では叩き出せねえから、まもなく元へ返ってしまった。ところで、その元というのが、旧来の鍔江流《つばえりゅう》の五囃子だが、道庵に言わせると、こいつもまだ不足がある。ところで……」
 道庵は得意になって、馬鹿囃子の気焔をあげはじめました。この場合においてお喋り坊主以上のお喋りが始まりそうだから、気の短い米友がじっとしてはおられません。
「先生、いい加減にしねえと、この坊さんが死んじまうぜ」
「あ、そうだそうだ、馬鹿囃子より人の命が大事だ、大事だ」
 道庵は、あわてて地蔵の台座の上から飛び下りて、米友と力を合わせて弁信を笈ぐるみ荷《にな》って、近いところの休み茶屋に担ぎ込みました。
 道庵が、お喋り坊主を休み茶屋の中へ連れ込んで療治を加えている間、外に立っている群集は、相変らず踊り狂っていたが、暫くして頻りに、その偶像を返されんことを要求します。
「坊さんかえしてもえいじゃないか、えいじゃないか」
 休
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