大菩薩峠
禹門三級の巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)捺《お》した
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)五六騎|轡《くつわ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と
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一
宇治山田の米友は、あれから毎日のように夢を見ます。その夢は、いつもはんで捺《お》したように不動明王の夢であります。夢や新聞は、毎日変ったものを見せられるところにねうちがあるのだが、米友のように、毎夜毎夜同じ夢ばかりを見せられては、驚かなければなりません。
夢から醒《さ》めたたびに米友の驚き呆《あき》れた面《かお》も、やはりはんで捺したようなものです。米友はついに堪り兼ねて、床の間にかけてあった不動明王の画像を取外しました。この画像があるから、夢を見せられるのである、画像が無ければ、夢も無くなるであろうと思って、その晩は取外して床の間へ捲いておいたけれど、やはり同じように、不動明王の像が夢
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