、相当の身分あり財産ある者が、続々として詰めかけるようになった時分のことであります。
例の道庵先生が、このことを洩れ聞くと、小膝を丁と打ちました。
「さあ、また乃公《おれ》の出る幕になった」
そこで近辺に住む子分たちに触れを廻し、馬鹿囃子《ばかばやし》の一隊を狩集め、なお有志の大連を差加えて小金ケ原へ乗込み、都鄙《とひ》の道俗をアッと言わせようとして、明日あたりはその下検分に、小金ケ原まで出張してみようか知らんと思っていたところへ、宇治山田の米友が訪ねて来ました。
「先生」
「やあ、珍物入来《ちんぶつにゅうらい》」
さすがの道庵先生が舌を巻いて、額を逆さに撫で上げました。
「どうも暫く御無沙汰をしました」
「いやはや」
道庵は額を逆さに撫でて米友の面《かお》を見ながら、いやはやと言ったのは、どういう意味だかよくわかりません。
「このごろは先生、おいらは目黒の方に行っていますよ」
「なるほど、お前さん、このごろは目黒の方においでなさるのかね」
「目黒の不動様のお寺に御厄介になってるんだが、先生、近いうち旅立ちをするんで、旅の用意の薬をちっとばかり貰いに来た」
「そうですか、よくお
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