の人に近寄ろうとはせず、一方も、わざわざ迎えに来たと言いながら、むしろ、人には背《そびら》を見せて月に心を寄せるように、すすき尾花の中に立っていました。
「細い道だから、遠慮をしていては際限がない、一足お先に」
 こう言いながら、お徳の前を通り抜けた竜之助の白衣が透きとおりました。その腰から裾へ朧染《おぼろぞめ》のように、すすき尾花が透いてうつりました。そうしてなんらの音もなく、風の過ぎ去るようにお徳の前を通ると、二三間の距離を置いて松原さして歩んで行きます。
 この時にまた提灯の光がパッとさしました。気を利かせたお徳が早くも提灯に火を入れたものか、そうでなければ、いったん、消えたと見えたのが、消えたのでなく、また燃え出したのでしょう。
 提灯の光が再び松林の中へ入ったのは、久しい後のことではありませんでした。
 竜之助は松林の、夜露のかからないようなところへゴロリと横になりました。いたいけな藤袴《ふじばかま》が、それに押しつぶされ、かよわい女郎花《おみなえし》が、危なくそれを避けています。
 疲れのせいか横になって、うつらうつらと眼を閉じていると、暫くして紛《ぷん》と鼻を撲《う》つ酒
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