少し見えるようになりました、薄月《うすづき》の光で物を見るほどになりましたわい」
「それは何よりでございます、どうしてそれまでにおなりなさいました」
「この下の蛇滝というのに、百カ日ほど打たれているうちに、おのずから光がさして来ました」
「それで、もうこんなに山道をお歩きになって毒ではございませんか、お疲れにはなりませんか」
「一向、疲れはせぬが、久しぶりでそなたに会ったこと故に、あの松原で暫く休息して、ゆっくり物語をしたいものじゃ」
「それもよろしうございますが、蛇滝のお堂とやらまでお伴《とも》を致しましょうか」
「参籠堂へは、やっぱり女人は近づかぬがよい、行って見たところで何の風情《ふぜい》もない、それよりか、あの松原の月の光の洩れるところが休みごろ、話しごろと思われる」
「では、あれへお伴を致しましょう」
「後へ少し戻ってもらいたい」
「どうぞ、あなた様からお先へ」
 高尾と小仏の中のすすき尾花の高原の中に立った二人は、たがいにその細い道を譲りました。けれども二人の中に、距離のへだたりがあることが変りません。
 一方は、火の消えた提灯を持って、懐しさに息をはずませておりながら、そ
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