まい。月の光が明るいのに、そこらあたりには大文字草《だいもんじそう》と見える花がいっぱいに咲いております。
「もし」
 消えた提灯を持って空しく立っていたお徳は、人を呼びかけました。やや離れたすすき尾花の中に朦朧《もうろう》と人の影があります。
「あなたは、どちらからおいでになりました」
「蛇滝から」
というのがその返事です。
「ここまで、わたくしを迎えに来て下さいましたか」
 お徳は息をはずませて、問いかけました。
「月が好いから、つい」
「ああ、よくおいで下さいました」
 二人はまだ離れて立っています。
「まあ、わたくしは、どんなにあなた様のことを心配しておりましたでしょう、甲府へおいでになってから後も、それとなくお尋ねしてみましたけれど、一向わかりませんでした、お消息《たより》をいただくと、取るものも取りあえずにこうして急いで参りました。お目はいかがでございます、もう、お見えになるようになりましたようでございます、それが何よりでございます」
 お徳は、やはり息をはずませて言う言葉です。それでも、二人は、すすき尾花の中に、やや距離を置いたのみで、相ちかよることを致しません。
「眼が
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