なものです。白くして小さきは多分白蝶と呼ぶもので、黒くして大きなるは烏羽揚羽《からすはあげは》でありましょう。この二つだけが提灯のまわりで狂います。
「叱《しっ》、いやな蝶々だこと」
女は気になるから片手で打つ真似をしました。その手をくぐって白いのは後ろへ、黒いのは前へ隠れて、また二つが一緒になって提灯の上へ現われるのは、人をからかっているような仕打ちであります。
猛獣毒蛇も怖ろしいけれども、それは火を見ると逃げます。弱々しい蝶に限って火を見ると、かえってそれを慕い寄るのが怖ろしい。避けるものは身を惜しむことを知っているけれども、寄るものは身を殺すことを惜しみません。火に焦《こが》れて来て、身の程を知らぬ望みのために、身を焼かれることを知らないものは、憐れむべくもまた怖ろしいものです。
「叱《しっ》、あちらへ行っておいで」
この時の蝶は、たしかに戯《たわむ》れているのではなく、噛み合っているのでした。いずれが早く火に触れようかとして、先を争うて噛み合っているのに違いない。
その時、提灯の火がパッと消えました。二つの蝶がその火を消してしまいました。
再び火をつける必要はあります
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