かりそめの縁《ゆかり》の女を呼び寄せてどうする気だ。彼には近き現在に於てお銀様があるはずだ。また庚申塚の辱《はずか》しめの時から、夢のようにここまで導いて、蛇滝の参籠に骨を折ってくれた小名路《こなじ》の宿の女も、たしかに宿に隠れているはずだ。理想のない人には、人生が色と慾とよりほかにはない。生きていることが真暗であった竜之助に、人を斬るの慾と、女に接するの慾と、その二つよりほかになかったものか知らん。今、幸いに、何かの恩恵によって、朧《おぼろ》げながら再び人の世の光明を取返しかけたという時に、もう女無しではいられないというのはあまりに浅ましい。呼び迎える男も男だが、それに応じて来る女も女だ。愚かなのは人間のみではありません、虫のうちの最も愚かなのを火取虫と申します。気になるのはこの女の携えている提灯の、後になり先になり二羽の蝶が狂うていることです。あまり気になるから、追ってみたけれども離れません。叱ってみたけれども驚かないで、提灯の上へとまり、後ろへ舞い、その志はひたすら中なる火を取らんとして、焦《あせ》るもののようです。
二つの蝶のうちの一つは白くして小さく、他の一つは黒くして大き
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