或いは山下の村へ行くものでしょう。
月夜に提灯は、ふさわしくないけれど、これとてもおそらくは、自分の足許を照すためではなく、悪獣や怪鳥の害を避ける要心のためと見れば、さのみ怪しむべきこともありません。怪しいのは、いかに旅慣れたとは言いながら、深夜、この間道を一人で通るという豪胆と、それから、しかく豪胆であらしめた用向そのものであります。
ところが、この豪胆なる旅人は女でありました。笠に、てっこう、きゃはんのかいがいしい身なりをしているけれども、女は女です。しかも背に男の子を一人背負うて、ほかに全く連れとてもなく、この山道を急ぐのであります。
竜之助がもと来た道とは全く別な方面、つまり小仏峠へ出る細径《こみち》のことであります。蛇滝へ帰らないで、この路を行くとすれば、右の怪しい火に心がうつって、それを突き留めてみたくなったのかも知れません。突き留めれば斬ってしまうつもりでしょう。たとえ眼があいても、心の悟りが開けきれない限り、彼のいたずら心は遽《にわ》かに止むべしとは思われません。
来た時の路とは違って、これから小仏へ出るまでは坊主山です。小仏そのものの全体が坊主山ですから、樺
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