を見ることができます。
 この時に、素人は、どうかすると相模川を多摩川と見誤ることがあります。ややあって多摩川を発見して、あれは利根か知らんと訝《いぶか》る者もありますけれど、少しく頭を冷やかにして地理を案ずれば、その区別は苦にするほどのことではありません。
 人跡《じんせき》の容易に到らない道志谷《どうしだに》を上って行くと、丹沢から焼山を経て赤石連山になって、その裏に鳥も通わぬ白根《しらね》の峰つづきが見える。富士の現われるのは、その赤石連山と焼山岳の間であります。空気のかげんによっては、道志谷の山のひだが驚くばかりハッキリして、そこを這《は》う蟻の群までが見えるような心持がする。
 やはり東を向いたままで、関東の平野を左の方にながめてゆくと、筑波と日光の山を見ることができます。月の出るてう武蔵野の西の涯《はて》に山があって、そこがすなわち秩父根《ちちぶね》であります。秩父の山と上毛の山とは切っても切れない脈を引いている。妙義も、榛名《はるな》も、秩父を除いては見ることも答えることもできないほど微かに、信濃なる浅間の山に立つ煙がのぼるのを眺めた時に、心ある人は碓氷峠《うすいとうげ》
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