ができるでしょう。この大見晴らしを絶頂とする高尾の山は、名の示す通りに山というよりは山の尾であります。二千尺を越ゆることのない地点ではありながら、その見晴らしの雄大広闊な趣が無類です。
 その地点だけは、樹木といっては更にない一面の薄原で――薄原といっても薄だけが生えているというわけではなく、薄も、尾花も、苅萱《かるかや》も、萩も、桔梗も、藤袴も、女郎花《おみなえし》もあって、その下にはさまざまの虫が鳴いています。
 ここに立って東を望むと、高尾の本山の頂をかすめて、遠く武蔵野の平野であります。東に向ってやや右へ寄ると、武蔵野の平野から相模野がつづいて、相模川の岸から徐々として丹沢の山脈が起りはじめます。それをなおずっと右へとって行けば甲州に連なる山また山で、その山々の上には富士の根が高くのぞいているのを、晴れた時は鮮かに見ることができます。それを元へ返して丹沢の山つづきを見ると、その尽くるところに突兀《とっこつ》として高きが大山《おおやま》の阿夫利山《あふりさん》です。更に相模野を遠く雲煙|縹渺《ひょうびょう》の間《かん》にながめる時には、海上|微《かす》かに江の島が黒く浮んでいるの
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