。堂守の老人の見たのが僻目《ひがめ》ではなく、或る時は、さやけき月の光を白衣に受けて、それが銀のようにかがやき、或る時は、木の下暗に葉影を宿してそれが鱗のようにうつります。道の程、八丁ばかりのところを、よれつもつれつ走って行く人の形が、時とすると白蛇ののた[#「のた」に傍点]って行くやと疑われます。
高尾の本山から右へ落つる水が妙音の琵琶の滝となって、左へ落つるのが神変の蛇滝《じゃだき》となるのであります。琵琶の滝には天人が常住琵琶を弾じ、蛇瀑《じゃばく》の上には倶利迦羅《くりから》の剣を抱いた青銅の蛇《じゃ》が外道降伏《げどうごうぶく》の相を表わしている。その青銅の蛇が時あってか、竜と化して天上に遊ぶことがあるそうです。禹門三級《うもんさんきゅう》の水は高くして、魚が竜と化するということだから、蛇滝の蛇が竜となって天上に遊ぶのは当り前です。けれどもこれは左様なものではありません。人界の竜か、みみずか、行者の着る白衣を着ている机竜之助が、密林の細径を出でて薄原《すすきばら》の大見晴らしの真中に立っています。
高尾の山の大見晴らしは、誇張することなくして関東一の大見晴らしということ
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