りき[#「がんりき」に傍点]がここに至って吹き出しました。吹き出したけれども剣呑《けんのん》は剣呑です。誰かこんな奴を使って、碌《ろく》でもない文句を吹き込んで、おれの度胆《どぎも》を抜こうとした奴がある。誰というまでもなく、それは南条先生のいたずらに違いないと思うから、ばかばかしくなってその遊び人の面《おもて》をじっとながめました。
じっとながめられてもこの先生、あまりお感じがないようです。
「兄い、お前《めえ》は男だと思ったら女なのかい、酒井様の御城下でお柳さんというのはお前のことかい」
がんりき[#「がんりき」に傍点]は呆《あき》れてこう言いましたけれども、その男はがんりき[#「がんりき」に傍点]が呆れたほどに呆れはしません。あっけらかんとしているところは、どうしても誰かに知恵をつけられて、一夜づくりの言葉手形を濫発したものに違いないのです。
その男が、あっけらかんとしている途端に、四辺《あたり》の稲叢《いなむら》のかげから、同じような程度の遊び人|体《てい》の(旅装の)男がのこのこと出て来ました。
「エ、これは、がんりき[#「がんりき」に傍点]の親分様でございましたか、御
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