ました。と言うのは、以前、来る時に自分が立って待伏せしていた路傍《みちばた》の松の木の下に立って、同じような形をして自分を待受けていたのが、思出し笑いをしながら歩いているがんりき[#「がんりき」に傍点]の横合いから不意に浴びせかけたものですから、そこでがんりき[#「がんりき」に傍点]が吃驚《びっくり》して踏みとどまると、
「エ、これはがんりき[#「がんりき」に傍点]の親分様でございましたか、御免なさんせ、斯様《かよう》、土足《どそく》裾取《すそと》りまして、御挨拶失礼さんでござんすが、御免なさんせ、向いまして上《うえ》さんと、今度はじめてのお目通りでござんす、自分は相州足柄|上秦野《かみはたの》の仁造《にぞう》の一家、唐駒《からこま》の若い者市助と発し……」
ともかく相当の心得ある博徒と見えて、切口上で賭博打《ばくちうち》の言葉手形を本文通り振出したから、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵もいよいよ面食《めんくら》いました。百蔵とても、こうして無宿渡世のならず[#「ならず」に傍点]者だから、その道の挨拶ぐらいを心得ていないはずはないが、この畑道の真中で、だしぬけにこんな挨拶を受け
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