勤番支配で三千石の芙蓉間詰《ふようのまづ》めの直参《じきさん》だが、ここへ持ち出したのは大諸侯だ」
「お大名なんですね……」
 がんりき[#「がんりき」に傍点]の百が咽喉《のど》から手の出るような返事をする。
「そうだ、それを一番、貴様がもの[#「もの」に傍点]にしてみる気なら、尻押しをしてやるまいものでもない」
「御冗談をおっしゃっちゃいけません、あなた方に尻押しをしていただかないからって一人でやりますよ、昔の鼠小僧なんぞは一人でお大名の奥向を、どの位荒したか知れたもんじゃありません、そういう仕事は一人に限りますよ」
「よろしい、それでは貴様に知恵をつけてやろう、ほかでもないが相手は出羽の庄内で十四万石の酒井左衛門尉だ。今、江戸市中の取締りをしているのが酒井の手であることは貴様も知っているだろう、我々にとってその酒井が苦手であることも貴様は知っているだろう、酒井は我々の根を断ち、葉を枯らそうとしている、我々はまたそこにつけ込んで酒井を焦《じ》らそうとしている、その辺の魂胆《こんたん》はまだ貴様にはわかるまい、わかって貰う必要もないのだが、貴様の今に始めぬ色師自慢から思いついたのは、酒
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