奥も表もありはせん」
「御冗談でしょう、奥方はおいでにならずとも、奥向の女中たちの綺麗《きれい》なところが、うようよといるはずでございます」
「そりゃあ、いかなる屋敷でも、女手をなくするというわけにはゆくまい」
「先生、ところで一つお聞き申したいのは、あの別嬪《べっぴん》は、ありゃあ今じゃあどなたの持物になっているんでございます」
「あの別嬪とは誰のことだ」
「お恍《とぼ》けなすっちゃいけませんね、多分あなた方が甲州から連れておいでになったんだろうと思いますが、ただ、ああして預かりっぱなしにしてお置きなさるのか、それともほかにもう定まる主がおありなさるのか、その辺が気になってたまらないから、いつか、あなたにお聞き申してみたいみたいと思っていたところです」
「ふん、早い奴だな、もう、あれを知ってるのか」
「先生、余人ならぬがんりき[#「がんりき」に傍点]の百をみくびりっこなし、人の物でもわが物でも、一旦もの[#「もの」に傍点]にしようと思ったら、逃《のが》したことのねえがんりき[#「がんりき」に傍点]の百でございます」
「それで貴様、あの女をもの[#「もの」に傍点]にしてみるつもりでもあ
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