がんりき[#「がんりき」に傍点]の案内ぶりによって見れば、南条は、右の荻野山中、大久保長門守一万三千石の城下なるものへ志して行こうとするものらしい。無論がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵は、案内を兼ねてそこまで同道するものと思われる。
 こうして二人は相模野《さがみの》を歩き出しているうちに、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵が、
「さて南条様、つかんこと[#「つかんこと」に傍点]を承るようでございますが……」
 事改まって、仔細らしい物の尋ねぶりであります。
「何だ」
「ほかではございませんが、あの相生町のお屋敷というものも、ずいぶん変てこなお屋敷でございますな」
「うむ」
「先頃まで、御老女様という大へんにけんしきの高いお年寄が采配《さいはい》を振っておいでになりましたが、近頃では、すっかり浪人者で固めておしまいになりましたね」
「うむ」
「ところが南条様、相手かわれど主《ぬし》かわらずというんでもございましょう、かわらないのは、やっぱりかわりませんな」
「何を言っているのだ」
「御老女様だけが抜けて奥向の方は、すっかりかわらないじゃございませんか」
「あの屋敷には、
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