れ猿橋のありまする桂川で、それがここいらへ来ては相模川になります、これからずっと下《しも》へさがると馬入川《ばにゅうがわ》で、東海道は平塚のこっちの方へ流れ出すのがそれでございますな、秋になると鱗《うろこ》の細かい鮎が漁《と》れて、ギョデンで食うと、ちょっと乙でございますよ」
 待伏せていたのが案内ぶりに、こんなことを言いながら先に立って歩き出したのを見ると、なんの珍しくもない、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百蔵でありました。
「そうか。そうして荻野山中《おぎのやまなか》はどの辺に当るんだ」
「山中はここですよ、向うの林に柿の木が見えましょう、あれと尖《とんが》った山の間あたりになりますな、あの山は鳶尾山《とびおざん》というんで、あれに抱かれてこうなったところに荻野山中、大久保長門守一万三千石の城下があろうというもんです、たとえ一万石でも、あんな山の中に御城下があろうというのは、ちょっと素人《しろうと》が驚きます」
「なるほど」
「なーに、ほんの一足です、真直ぐに引張れば五里といったところでしょうけれども、いったん厚木へ出て戻るのが順ですから、延べにして八里と見積れば、たっぷりです
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