うな心持がすると話したことがあります。神尾主膳もその後、お銀様に対してはうっかり冗談もいえないと言ったのは、たしかにその用心があるらしいからです。
女だてらに脇差を抜いて、一方に槍を防ぎながらお銀様は、ようやく梅の木を離れて樫《かし》の木の後ろへ避けることができました。覚束《おぼつか》ないうちに本性がいよいよ冴《さ》えて、神尾主膳は透《す》かさずそれを追いかけました。
樫の木を移ってお銀様が、石燈籠《いしどうろう》の蔭へ避けた時に、神尾主膳はさながら絵に見る悪鬼の形相《ぎょうそう》です。いかなるところへ逃げ隠れようとも、この怨敵《おんてき》を突き伏せずしては置かずという意気込みで、燈籠の屋根の上や、台石の横から無二無三に突き立てました。
形ばかりに脇差を構えたお銀様は、それを振閃《ふりひらめ》かしては槍の穂先を逃れようとする。槍はしばしば流れ、手元はしばしば狂うけれども、その狂暴はいよいよ衰うることあるべしとも覚えません。ついに石燈籠もろともに、お銀様を縫いつけるのかと思われるばかりです。
お銀様は石燈籠の蔭から追いつめられたのが池の端《はた》です。池の汀《みぎわ》を伝って逃げ
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