たから、中でお銀様は、それ見ろと言わぬばかりの心持です。それは力の尽きた神尾主膳が、負惜みから言った捨台詞《すてぜりふ》と思ったからです。この捨台詞で引上げて、母屋《おもや》へ帰って寝込んでしまうのが落ちだろうと思ったからです。
 果せる哉《かな》、それから後は扉へ突当る音もしなければ、押したり引いたりしてみることもなく、槍を隙間へ突込んでコジあけようとするような無茶な物音も聞えません。しかし、左様な物音が聞えないからといって、それは決して神尾主膳がこの場を去って、母屋へ引揚げたのではありません。神尾主膳は今もなお土蔵の周囲をうろうろしながら、よろめく足を踏み締めては酔眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、槍は片手に、そこらあたりから頻《しき》りに物を掻き集めています。その掻き集めている物というのは、荒れた庭内に落ちている杉の枯葉だの、木の枝だの、竹の折れだのという物を、手に任せて掻き集めているのであります。危なっかしい手つきで、それを掻き集めては例の土蔵の戸前へ持って来て、無暗に積むものだから、忽ち小山のように盛り上げてしまいました。
「占《し》めた!」
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