に神尾主膳が、槍を投げ出して両手で抱え込んだのは一束《ひとたば》の薪です。その土蔵の廂《ひさし》に高く積み上げてあった薪の束を発見したからのことで、それを発見すると神尾は占めたとばかり、槍を投げ出して、一束ずつ抱え出して、前に積み上げた枯葉や、木の枝の上へ、左右から立てかけたものです。
時分はよしと見た頃合に、主膳は、やはり本性《ほんしょう》たがわず、投げ出しておいた槍を手さぐりに拾い取って、
「坊主、覚えていろ、今、あくようにしてあけて見せるから後悔するな」
こう言って、今度は、たしかにこの土蔵の前を立去って、母屋の方へ行く足音がします。
お銀様は神尾の挙動がわからないから、この時も負惜みの捨台詞《すてぜりふ》だろうと思って、やはり七分の冷笑気味でおりましたが、暫くして、また足音が聞え出したので、オヤと思いました。さても執念深い、力が尽きて、テレ隠しの捨台詞で、母屋へ逃げ帰って寝込んだものだろうと思っていたところが、たしかにまた、やって来た。
「さあ、どうだ、お喋り坊主、この蝋燭《ろうそく》で焼き殺してくれるぞ」
その声を聞いたお銀様がたちあがらないわけにはゆきません。事実神
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