戸を手荒く引っぱったけれども、それは内から錠《じょう》が卸してあって、引いても押しても容易にあくものではありません。
そのたびに激昂する主膳は、ドシンドシンと戸前にぶっつかりはじめます。果ては槍の石突で戸の隙をコジにかかります。けれども尋常の雨戸と違って、いったん、内から錠を卸した以上は、兇暴な力を以てしても外から打ちこわすわけにはゆきません。
自分の力いっぱいの暴力を利用したけれども、ビクともしないので神尾は、いよいよ激昂しているが、その激昂はいたずらごとで、この時分にはお銀様も、神尾の無駄骨折りを冷笑するくらいの余裕を持っておりました。破れるものなら破ってごらん、という驕《おご》れる態度を以て、お銀様は戸前で狂っている神尾主膳を笑止《しょうし》がっていました。
さりとて、お銀様のこの驕慢心が永く続くものではありません。常識を失っているとはいえ、兇暴の時には兇暴の知恵が働くものであります。
「坊主、お喋り坊主、中で押えてるな、小癪な奴だ、しっかりと押えてあかないようにしているな、よし覚えていろ、今、あくようにしてあけて見せるからな」
神尾主膳はこう言って、暫く暴力を中止しまし
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