いなお銀様が、もしいるならば、今頃もたしかに、血を刺して、お経を書いていなければならないはずです。
その水を汲むたびに井戸をのぞき込むと、神尾主膳は血管が裂けるほどに憤《おこ》り出して、
「お喋り坊主、出て来い」
と怒号します。主膳の眼には、たしかにこの井戸の底にお喋り坊主がいて、減らず口を叩いて自分を、おひゃらかしでもするものと見ているらしい。
「お喋り坊主、貴様の言い草が、いまだに耳に残って不愉快千万でたまらぬわい、おそらく一生のうちに、貴様ほど不愉快な奴はなかろう、貴様のことを思い出すと、骨から肉が浮び出すほど忌《いや》になるわい、つべこべと尋ねられもしないお喋りを、井戸へ投げ込まれてまで喋りつづけている声が、地獄の底から迷うて来たもののように耳に残っている、思い出しても癇《かん》にさわってたまらぬ、貴様を引き出して、骨も身も一度に擦りつぶしてくれぬ上は、この癇が納まらぬわい」
神尾主膳はこう言って地団駄を踏みながら、しきりに水を汲み上げては被ります。その度毎に、弁信に対する恨みは骨髄に徹するもののように、身を戦《わなな》かせるのであります。
果してお銀様はその時、たった一
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