、あぶない足を踏みしめると、長押《なげし》にかけた槍を取卸しました。逆上すると槍を取るのが神尾の癖であります。
「騒々しいわい、者共、何が面白くって踊るのだ」
 槍をしごいて縁側から庭へ飛んで下りました。けれども、今宵《こよい》に限って誰もお危のうございますと言って止める者はありません。荒《あば》れ出した神尾主膳は、この手槍で真一文字に庭の石燈籠へ突っかけて行きました。それが真面《まとも》に石燈籠へ当ったら、槍の穂先もポッキリと折れるのでしょうが、燈籠の屋根の上を掠《かす》めて流れたから、そのハズミで主膳は石燈籠へブッつかって、※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と後ろへ倒れました。
 神尾主膳は、起き上って手近な植木を滅茶滅茶に突き立てます。主膳の眼には石燈籠も立木もみんな人間に見えて、当るを幸い、それを突き伏せていることに、少なからず痛快を貪《むさぼ》っているようなあんばいです。幸か不幸か、いくら荒れ狂っても相手が石燈籠であり、植木であるから、手答えはあっても手向いはありません。それに、一家を挙げての留守と来ているから、荒れたい放題に荒れたところで、それを取押えよ
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