子稲荷の踊りへ出かけるという話を聞くと、べつだん誘いをかけたわけでもないが、化物屋敷に居合わせた御家人崩れの連中が、我も我もとお伴《とも》を志願することになった。ここから繰り出しただけでも十人余りです。
してみると、屋敷に残されたのは、神尾主膳ひとりであります。彼等は主膳に酒を飲ませておいて――ではない、主膳が昨晩から酒浸《さけびた》りになって、今は熟睡しているのをよいことにして、体《てい》のいい置いてけぼり[#「置いてけぼり」に傍点]を食わせて、みんな出払ってしまいました。こうなると、これらの連中はかなり薄情なものであります。
眼が醒《さ》めて神尾主膳は、しきりに水を呼びました。けれども、水を持って来るものはありません。返事をする者もありません。
神尾は病床でしきりに怒鳴りました。いくら怒鳴っても、今宵に限ってこの化物屋敷には人間一人いないのですから、神尾の怒鳴りも空雷《くうらい》に過ぎないのです。酒を多く飲めば酒乱の萌《きざ》しがあり、今も飲んだ酒が醒めたというわけではないのですから、主膳は赫《かっ》と怒り、一時に逆上《のぼ》せあがりました。病床からよろよろと這《は》い出して
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