へは入らないで行ってしまいます。多分これから王子の稲荷の衣裳榎とやらへ行って散々《さんざん》に踊るのでしょう。
 その翌日になってみると大きな評判が立ちました。王子の稲荷の衣裳榎の下へ、関八州の狐が悉く集まるという噂であります。それで十里四方から狐火が炬火《たいまつ》のように続くという噂であります。それを見物せんがために、江戸の市中をはじめ近在から集まる人が雲の如しという噂であります。ついには人と狐が一緒になって踊り出し、人が狐だか、狐が人だかわからないで踊り出すという噂がいっぱいに拡がりました。
 これによって見ると、今年はたしかに豊年である。こうして衣裳榎へ多数の狐が集まるのは、それぞれの狐がみな官位を欲しがるからで、それと人間と一緒になって踊るのは、人間も狐も共に有卦《うけ》に入ったのだという縁喜のよい解釈であります。今夜はまた昨晩よりは一層盛んで、これから毎夜の如く、人と狐の踊りがあるだろうという評判です。
 化物屋敷の離れにいたお絹はその評判を聞くと、昨晩貰い受けた狐の面を取り上げて、女中を相手にその話をしていたが、今晩は王子の稲荷まで出かけてみようとの相談です。
 お絹が王
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