立ちました。
踊りの同勢がこの化物屋敷の前へ来て、そこでまた盛んに踊り出している時に、
「喧《やかま》しいやい」
神尾だけが焦れているけれども、そのほかの連中は面白がって出て見ます。
離れにいたお絹もまた、じっとしてはいられません。女中を連れて垣根からしきりに踊りを見物していたが、つい面白さに釣り込まれて、門の前へ出てしまいました。
「このお屋敷の中には、たしか八幡《やわた》のお稲荷様がありましたぜ、お稲荷様の前で踊らせてもらいましょう」
「そういうことに願いましょう」
同勢は踊りの威勢で、化物屋敷の中へ混み入ってしまいました。もとより形の如き荒れ屋敷ですから、門と垣根の締りも厳重というわけにはゆきません。屋敷の中へ混み入った同勢は、庭の方へと踊って行き、提灯《ちょうちん》をブラ下げて、えいや、えいや、と踊りはじめました。
迷惑がった連中も、実はそれが面白いので、大いにおだてて踊らせたいくらいであるが、神尾主膳はその物騒がしさを聞くと赫《かっ》と逆上しました。
「誰にことわってこの屋敷へ入った、追い返せ」
ひとりで喚《わめ》いているけれども、誰も相手にする者がありません。
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