その翌日あたりから、この種類の悪戯を江戸の真中に向って試みて、市中の狼狽ぶりを見物しようという評議が、この物騒な屋敷の中で行われるようになると穏かではありません。
 穏かでないのはこの屋敷に限ったことはありません。この頃、一体の世間がそうであります。いつも暢気《のんき》であるべきはずの長者町の道庵先生の屋敷までが、この穏かならぬ雲行きに襲われているというのは嘘のような真実《まこと》であります。先生は相変らずだが、その子分たちが枕を高くして寝られないことがたった一つあります。それはほかでもない、洋行に出かけた鰡八大尽《ぼらはちだいじん》がいつ帰って来ないものともわかりません。帰って来れば必ず、これ見よがしのお祝いが、この隣りの御殿で行われるにきまっています。その際において、指を啣《くわ》えて見物していなければならないことの残念さを思うと、子分の者が躍起になるのも無理はありません。そこで、今のうちから、それに対抗する方針を考えておかなければならないと、道庵の子分たちが、夜の目も寝ずに苦心していることの体《てい》は、よその見る目も哀れであります。

         八

 染井の化物屋敷は
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