たけれど、やや暫くというものは返答がありません。返答がありませんでしたけれど、自分の訪れは奥へ届いたものと信じて弁信は、それ以上には念を押さずに待っておりました。果してバタバタと廊下を渡って迎えに来た者があります。
「おお、あなたは弁信さんとおっしゃるお方でしたか、あなたも琵琶をお弾きになるそうですね、ただいま、こちらにも琵琶のお上手な方がおいでになりました、道庵先生もそれをお聞きになっていらっしゃいます、ぜひ、あなたもその席へおいで下さるようにと、先生も、皆様も、そう申しておいでなさいます、さあ、お上りくださいまし」
こう言って、わざわざ奥から弁信を迎えに来たのはお松であります。
「左様でございましたか、実は私もただいま外でお聞き申していたところでございました、それを聞かせていただきますれば、私と致しましても願ったり叶ったりでございます。そういうことでございますなら、好きな道でございますから、遠慮なしに上らせていただきますでございます」
弁信は杖をさしおいて、はや玄関へのぼってしまいました。
やがて弁信が広間へ案内されて見ると――弁信は盲目《めくら》だから見るわけにはゆきません
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