開くようになりましたのでございます。いよいよ尊者が心眼をお開きになりました時に、妙音弁才天が十五童子をひきつれて、お釈迦様の御前で、琵琶の妙音曲を巌窟尊者にお授けになりました。その頃、中天竺に阿育大王《あいくだいおう》とおっしゃる王様がございまして、そのお世継《よつぎ》が倶奈羅太子《ぐならたいし》と仰せられました、一国の太子とお生れになりましたけれども、何の因果か、このお方がふとお眼をおわずらいになって、私共同様の盲目《めくら》の身となっておしまいになりました。四海を治め給う御方でも、私共のような漂泊《さすらい》の小坊主でも、眼が見えなくなりましては世間は闇でございます……」
「おやおや、雨が降って来ましたぜ」
 さきほどから怪しかった空がバラバラと雨を落して来たので、集まっていたものがどよめき渡りました。そこで盲目法師のお喋りも一段落になって、濡れるを厭《いと》う人たちは、右往左往に馳せ出しました。

「もし、先生、長者町の道庵先生は、まだお屋敷にいらっしゃいますか、それとももはやお帰りになりましたか」
 弁信の姿が表の門のところに現われて、案内を頼みましたのは、それより後のことでし
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