明をやり出したのに驚かされました。
 お喋り坊主はひきつづき、海の中に漂う海月《くらげ》のように、小路《こうじ》の暗いところで法然頭《ほうねんあたま》を振り立てて、
「わたくしが琵琶を習いはじめにお師匠さんが、薩摩の琵琶はこうだと弾《ひ》いて聞かせてくれました、あの国では、おさむらいたちのうちに専ら琵琶が流行しまして、二本差して琵琶を背負って歩く人が多いそうでございます、それで薩摩の国の琵琶は、おさむらい風の勇ましいものでございます、私共が習いました平家琵琶とは、なかなか趣が異《ちが》ったものでございます、けれども源《もと》はみんな一つでございまして、やはり、薩摩の琵琶も地神盲僧から出たものでございますから、わたくしがこうして耳を傾けて聞いておりますると、なるほどと思い合わせることが多いのでございます。エ、地神盲僧とは何だとおっしゃるのですか、地神の地の字は、天地の地の字を書くのでございます、神は神様の神という字、盲僧の盲は盲目でございまして、僧は出家の僧でございます、地神というのは地の神様、盲僧というのは、私共みたような目の見えない坊主のことでございます」
 お喋《しゃべ》り坊主がこ
前へ 次へ
全187ページ中111ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング