えて酒を飲ましめば五百世までも手無からん、況《いわ》んや自ら飲まんをや、とございます。そのことを先生に申しますと、先生は、べらぼうめ、道庵が酒を飲んでいるから天下が泰平なんだ、道庵が酒をやめたら天下が乱れるから、それで人助けのために酒を飲んでいるのだと、こうおっしゃいますから、わたくしも二の矢がつげないのでございます。まあ、もう少しこちらでお待ち下さいまし、わたくしどもも実は茂太郎と二人で、まだ夕飯もいただかないでお待ち申しているところでございます。ナニ、もう御膳《ごぜん》は出来ておりますのですけれども、先生より先にいただいては済むまいと思いますから、二人ともにまだ夕飯を食べないでお待ち申しているところでございますが、いつお帰りになるかわかりませんから、これから、ちょっと用足しに出かけて参ろうとするところでございます、なにぶんよろしく」
お喋り坊主の弁信は、一息にこれだけのことを喋って、杖をついて道庵の屋敷を出かけました。
本所の相生町の老女の屋敷の中から、琵琶の音が洩れ聞えたのはその夕べのことです。
道を通る人は、わざわざ立ち止まってその音に耳を傾けるものもあります。聞き流し
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