も踊ることの好きな国民かなと、笛を携えた茂太郎が呆《あき》れて、その広間の中をながめていました。
 小金ケ原から踊り抜いて来た連中は民衆の階級であります。彼等はのぼ[#「のぼ」に傍点]せ上ってところ嫌わず踊るから、ついにはふん[#「ふん」に傍点]縛られたりするようなことになる。ここの中で踊っている連中は、どんなに間違っても縛られることはないから、男と女とが抱き合ったりなんかして、盛んに踊っているのであります。
 われら笛吹けども踊らず、と昔の人は言いましたが、笛を吹かないでも、このくらい内と外とで踊れば充分だろうと思われます。茂太郎はそれを見ていると、みんな立派な人たちが、いい年をして、どうしてまた、あんなに食いついたり、抱き合ったりして、臆面《おくめん》もなく踊れるのだろうと思いました。けれども、この人たちは、かの民衆階級のするように、決して無暗に馬鹿踊りをするわけではありません。こうして出来た入場料を、みんな慈善事業に寄附しようという、非常に高尚な目的でやっているのですから、食いついたり、抱き合ったりして踊ったりしたところが、その性質がおのずから違っていることを茂太郎は知らないから
前へ 次へ
全187ページ中101ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング