そのうちにもこの力持と来た日には、三人や五人では手に負えねえ、また身の軽い方は商売柄だから、ここらの田圃《たんぼ》へ突《つ》ん逃げたら、蝗《いなご》を捕まえるような手数がかかる、どうしたものだ」
「いいことがあるわい、一度に縄を解いてやると物騒だから、一人ずつ縄を解いてやろうじゃねえか、ここにいるおれたち仲間と、女の仲間と数を読み合わせておいて、籤引《くじびき》とやろうじゃねえか、籤を引き当てた順で、この女たちを片っ端から一人ずつ連れて、どこへでも勝手なところへ届けてやることにしたら面白かろうじゃねえか」
「そいつはいいところへ気がついた、籤引にしよう。籤引はいいけれど、この力持なんぞを引き当てたら災難だ、下手なことをやればこっちがかえってギュウと潰《つぶ》されてしまうんだから、あんまりジタバタさせねえように、ものやわらかに道行《みちゆき》という寸法に行きてえものだ」
「ものやわらかに道行という寸法に行けばそれに越したことはねえが、おたがいに和事師《わごとし》という面《つら》でもねえし、とにかく、籤としてみよう、籤を引いてみた上で、また何とか面白い趣向があるだろうよ」
「籤を引く前にこ
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