大菩薩峠
女子と小人の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)根《こん》がよく

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|挺《ちょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+愛」、第3水準1−15−23]
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         一

 伊勢から帰った後の道庵先生は別に変ったこともなく、道庵流に暮らしておりました。
 医術にかけてはそれを施すことも親切であるが、それを研究することも根《こん》がよく、ひまがあれば古今の医書を繙《ひもと》いて、細かに調べているのだが、どうしたものか先生の病で、「医者なんという者は当《あて》にならねえ、人の病気なんぞは人間業《にんげんわざ》で癒《なお》せるもので無《ね》え」と言って、自分で自分を軽蔑《けいべつ》したようなことを言うから変り者にされてしまいます。そうかと思うと、「人の命を取ることにかけては新撰組の近藤勇よりも、おれの方がズット上手《うわて》だ、今まで、おれの手にかけて殺した人間が
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