で下さい、私が掛合うから。いや、そんな間緩《まぬる》いことをいってはおられん、今晩にも私が出向いて行って取って来ますから」
「いいじゃあないかね、二日や三日は」
「いけません、そんな了簡では金貸しはできません」
「金貸しという商売も思ったより忙《せわ》しい商売だねえ」
「忙しくって結構、忙しくないようでは上ったりですよ。おかげさまで、これごらんなさい、帳面尻《ちょうめんじり》が鼠算《ねずみざん》のように殖《ふ》えてゆく。どうです、おばさん、元金が利息を生み、利息がまた子を産むんですからね、その子がまた孫を産むんですから、ほうっておいてもメキメキと殖えてゆくんですよ。おばさんも少し算盤《そろばん》の勘定を覚えて下さい、利息の見積りなんぞを呑込んでおいてくれないと困る、私一人で朝から晩までやっているのも面白いけれど、おばさんにも少し覚えておいてもらわないと困ることがあるでしょう」
「使う方ならいくらでも引受けるが、儲《もう》ける方は面倒《めんどう》くさい」
「そうではありませんよ、その道へ入ってみるとこんな面白いことはない、なにしろ二十五両一分というのが利息の通り相場で、二十五両貸して月に
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