一分の利息を上げる、それより上を取ってはならないことにお上《かみ》できめてあるんだが、どうしてどうして、裏はそんなものではない、十五両一分から十両一分、五両一分なんというのも珍らしくはないのですからね。それで向うが折入って御無心《ごむしん》に来る、こっちが高くとまって、それでいやならおよしなさいという腹でいると、背に腹は換えられないから向うが往生してしまうんでさあ、向うに働かしてこっちは懐手《ふところで》をしていて、うまい汁はみんな吸い上げてしまう、こんな面白い商売はまたとあるもんじゃない。これから追々|大尽金《だいじんがね》というのを、はじめてみようと思っていますよ。大尽金というのは大身《たいしん》や金持の若旦那なんぞが、親や家来に内緒《ないしょ》で遊ぶ金を貸すんですね、これは思い切って高い利息を取って、そうして取りはずれのない仕事、ナニ、証文面《しょうもんづら》は御規則通り二十五両一分にしておくから、まかり間違って表沙汰になったところで、それだけの金は取れるんだ。そんな心配はありませんよ、こっちが表沙汰にしようと思っても、向うで折入って来るから……」
忠作は帳面と算盤を見比べなが
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