はなかば頃からさんざんに苦しんで、とうとう降参してしまって苦《にが》い面をすると、金公が大よろこびで復讐の意味を兼ねた駄句を作ったりなどして嘲弄します。入道甚だ安からず思ってまた一石、戦いを挑《いど》む。こんな閑《ひま》つぶしをやっていたが雨はやまないのに、入道は負ければ負けるほど躍起《やっき》になって、兵馬に畳みかけて戦いを挑む。兵馬もその相手になって、とうとうその晩は金公と一緒にこの堂守の家へ一泊することになりました。
 兵馬はその晩、勧められるままに、この堂守の家へ泊り込んでしまいました。
 兵馬を一室に寝かしておいて、かの木莵入と金公とは、酒を飲み出します。金公が薄っぺらな口先でしきりにキザを言っては入道に愚弄されるのが、兵馬の寝間へよく聞える。愚弄されても金公は一向お感じがなくベラベラ喋る。さきに柿の木の上で助けてくれ助けてくれと泣き声を出したことなどは※[#「口+愛」、第3水準1−15−23]《おくび》にも出さず、鬼の三匹も退治して来たようなことを言っているから、兵馬はイヤな奴だと思います。
 この二人はベチャクチャと喋った揚句《あげく》に、打連れてこの堂を出かけて行きまし
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