り兼ねて刀を押取《おっと》ると、附添いの者合せて十余人がみな同じようにして竜之助を取捲く。
 その時の竜之助の冷笑は、やはりこんなやつらを相手に、我ながら大人げないという冷笑で、彼等を嘲《あざけ》るのではない、自分を嘲るような冷笑でありました。
「申すまでもない山崎譲は偽名、拙者には別に本名がある。しかし山崎は拙者の友人、その名前を騙《かた》っても別に障《さわ》りもあるまいから、ちょっと融通してみた」
「無礼者め! 本名を名乗って、早く謝罪《あやま》って引込め、さもない時は手討ちにする」
「本名はそちらから名乗ってみるがよい、今は知らず、神尾主膳はもと三千石の旗本、もう少し睨《にら》みの利いた男であったはず」
 こう言いながら竜之助は、片手で持っていた槍を、両手で持って折敷《おりし》きのような形に身体《からだ》を立て直すと、その槍の穂先が擬いの神尾主膳の咽喉元へピタリ。
「これ、何をする」
 擬いの神尾は驚き慌《あわ》てる。周囲の者共はどよみ渡る。
「本物の山崎は棒をよく使ったが、拙者はあり合せの槍。おのおの騒ぐな、騒いで刀が鞘走《さやばし》るようなことがあると、拙者の眼は盲《めし》い
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