外《そ》るか二人でおしかけて、その山崎にぶつかってみよう」
「そうさな」
「もとよりこっちだって、殿様御承知の上で仕組んだ狂言だ、バレかかったら神尾主膳実はその代理ということで、うまくお茶を濁してしまおうじゃねえか」
「まあ、そういうことでやってみよう、まかり間違ったら拝み倒しよ。なに、山崎だってずいぶん殿様のお世話にはなっているんだから、まるっきり話のわからねえこともあるまいよ」
「今夜は、ゆっくり休んではかりごとを考えて、明朝早く望月のところへ出かけるとしよう」
 それで二人は寝ようと思っていると、
「申し上げます、山崎様がただいまこれへお越しになりました」
「ナニ、山崎が来た?」
「ハイ、お役人様にお見せ申すものがあると申しまして、おひとりでこれへおいでになりました」
「明朝こちらが参ると申したではないか」
「でも、山崎様が急の御用とおっしゃいまして」
「山崎の急用は私のことだ、こちらの用は公儀の御用だぞ」
「恐れ入りまする」
「早く追い返せ」
「あれ、もう廊下をあの通り、ひとりで歩いておいでになりまする」
「ナニ、ひとりで歩いて来る? それは困った、ここへ来られては困る、ここへ
前へ 次へ
全100ページ中92ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング