あれば、殿様をまた昔の殿様にしてお目にかけますがなあ」
「金があれば、権六を昔の権六にしてやるのだが」
主従はまた面《かお》を見合せる。
「金というやつは、こっちでのぼせればのぼせるほど向うが逃げて行く、上手《じょうず》に使える奴のところへは出て来ないで、薄馬鹿《うすばか》のような奴を好いてウンと集まる、始末の悪いやつだ」
「あるところにはある……もんでございますが、無《ね》えところには逆《さか》さに振っても無え」
「あるところにはある……権六、そのありそうなところを知ってるか」
これは別に意味がありそう。
「ありそうなところ……とおっしゃいましても、そりゃまあ、ありそうなところには……」
「甲州は金《きん》のあるところだ」
「そりゃ、どこにしましても、あるところにはありますな、甲府も御城内の御金蔵《ごきんぞう》へ参れば唸《うな》るほどお金もございましょうけれど、そりゃあるだけのことで、よし御金蔵で金が唸って悶掻死《もがきじに》をしていようとも、手を出すわけにはいきませんからな」
「誰も御金蔵へ手を出せとは言わない、御金蔵のほかに甲州で金のあるところを、権六、貴様は知ってるだろう」
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