ないかなあ」
「左様でございますねえ」
二人は睨めくらをする。
「貴様の面《つら》も変らねえ」
「殿様もこのごろはおいとしゅうございます」
「はははは」
睨めっこをして淋しく笑う。なるほど、これでは酒もうまくなさそうです。
「女を呼んで、一騒ぎ騒がせましょうか」
「それもこのごろでは張合いがないわい、甲府の女どもにまで懐都合《ふところつごう》を見透《みす》かされるような強《こわ》もてで、騒いでみたところがはじまらない、やっぱり貴様の面《かお》を見ながら飲んでいる方がよい」
「いよいよ以ておいとしゅうございます、春や昔というところでございますねえ、笠鉾《かさほこ》の下でお文《ふみ》を読んでおいでなさる覆面のお姿が眼にちらついてなりませんよ。大門口《おおもんぐち》の播磨屋《はりまや》で、二合の酒にあぶたま[#「あぶたま」に傍点]で飯を食って、勘定が百五十文、そいつがまた俺には忘れられねえ味合だ」
「権六、どう考えてみても、どのみち金だな、金が欲しいな」
「それに違いございません、色と金、二つにわけて申しますが金があっての色でございますよ、金さえありゃあ……」
「金が欲しいな」
「金さえ
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