騒ぎ、今夜もまた夜徹《よどお》し飲み明かしなさるのでござんしょう」
「それは盛んなことじゃ。そうして嫁御寮《よめごりょう》はもうこっちへ着いたのか」
「お嫁さんは前の日、わたしもちらと見ましたが、山家《やまが》には惜しい器量のお嫁様でござんした」
「どこから来たのじゃ」
「同じ甲州でござんすけれども、ここからはだいぶ離れておりまして、萩原領の八幡《やわた》村というところからお輿入《こしいれ》でござんすとやら」
「八幡村?」
 竜之助は何をか思い当って、
「八幡村というのは、石和《いさわ》と塩山《えんざん》に近いところではないか」
「左様でござんす、左様でござんす、あちらの入《いり》でございます」
「その八幡村からここへ嫁入りに来たのか」
「はい、向うもなかなか大家だそうでございますが、こっちはそれよりも大家で、お眼が見えればすぐおわかりでござんすが、白壁作りの黒塀《くろべい》で、まるでお城のような構え、権現様よりもずっと前から、この近辺の金の出る山という山を、みんな預かっているお家柄でござんすから、ああしてお祝いが幾日も続くのでござんす」
「なるほど」
 いま会った山崎譲の話では、関東
前へ 次へ
全100ページ中66ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング