ざんすよ」

 山の娘たちは隊をなして、また他国へ出かけていったが、果してお徳だけは残ってしまいました。お徳は後に残ったのみでなく、それから直ぐに竜之助を案内し、蔵太郎をつれて、篠井山の麓から奈良田の温泉へ行ってしまいました。
 それは盲目の竜之助を馬に乗せて、お徳は蔵太郎を背に負って、篠井からまだ十里も山奥になっている奈良田へ行く間に、お徳はいろいろとその土地の物語をしました。
「昔、奈良の帝様《みかどさま》がおうつりになったところで、それから奈良田と申します、今でもその帝様の内裏《だいり》の跡が残っているのでございます」
「奈良の帝? 左様なお方がこんなところへおいでになる由《よし》もなかろうに」
「それでも昔からそのように申し伝えられてあるのでござんす、おいでになってごらんになればわかりますが、山と山とで囲まれた村の真中に二丁ほどの平らなところがあって、そこに帝様のお宮のあとが今でも神様に祀《まつ》ってあるのでござんす」
「帝様と申し上げるのは日の下を知ろし召すという方じゃ、その方がなんで斯様《かよう》なところへおいでなさるはずがない、大方その帝様のお社《やしろ》をそこへお移し申
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