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 旅をして歩く時に興に乗じてうたう歌、危険な山坂を超ゆる時、魔除《まよけ》を兼ねて歌いつけの歌、心なく歌っても離愁《りしゅう》の思いが糸のように長く引かれる。
「ホホホ、こう歌いますと、なんとなく情合《じょうあい》が籠《こも》っているようでござんすけれど、この替歌《かえうた》に……」
と言ってお徳は直ぐに、
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甲州出る時ゃ涙で出たが
今じゃ甲州の風もいや
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と歌い、
「こうなってしまいますから薄情なもので……まだわたしたちの中でうたいます歌にこんなのが」
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道中するからお色が黒い
笠を召すやら召さぬやら
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 それから最後に、
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生れ故郷の氏神さんの
森が見えますほのぼのと
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 三十を越したお徳も、土地の歌をうたう時は乙女の心になる、鄙《ひな》の歌にも情合が満つれば優しい芽が吹いて春の風が誘う。

         六

 山の娘たちはいったん帰って来たけれど、また暫らくして旅に出かけなければならなくなりました。今度は郡内《ぐ
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