まで飛び下りた身の軽さ。どこといって逃げ場所がないから、がんりき[#「がんりき」に傍点]は縁の下へ逃げ込んでしまいました。
警護の侍たちや参詣の群衆は直ぐに縁の下へ追いかけましたが、それに捉《つか》まったのは運悪く、がんりき[#「がんりき」に傍点]でなくて米友でありました。
米友は旅の疲れで、ついうとうとと眠りかけているところを、遮二無二《しゃにむに》折重なって、
「いた、いた」
「な、な、なにをするんだい」
寄ってたかって米友を縁の下から引張り出したのであります。
別に悪いことをしたわけでもないからと思って米友は、別に抵抗もせずに引き出されて来たのでありました。明るい所へ出して見ると、
「おやおや」
取捉《とっつか》まえた連中も少し呆《あき》れ面《がお》です。いま追いかけたのは、もっと身のこなしが人間らしい男であったが、これは子供、子供のように見える大人、大人のように見える子供。
「こりゃ違う」
誰が見ても米友とほかの人とは一見して区別がつくのであります。
「同類の者であろう」
違ったとはわかったけれども、それでも厳《きび》しく押えて逃がそうとはしません。
「それ、遠く
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